賃貸経営の節税対策【基本と最新情報】専門家が教える賢い節税術

賃貸経営は、長期的な安定収入と資産形成を目的とした魅力的な投資手段ですが、収益を最大化するためには節税対策も忘れてはいけません。

不動産所得は、給与所得などと異なり、様々な経費を計上できるという特徴があります。しかし、その一方で、税制も複雑で、適切な知識がないと思わぬ税負担を負ってしまう可能性も。

本記事では、賃貸経営に精通した専門家として、基本的な節税対策から最新の節税情報まで、分かりやすく解説いたします。

目次

賃貸経営を成功させるための節税対策

賃貸経営は、安定した収入源として魅力的ですが、税金対策もしっかり行うことで、収益を最大化することが重要です。 今回は、賃貸経営で活用できる主な節税対策について、分かりやすく解説していきます。

減価償却費を賢く活用しよう

建物や設備は、時間の経過とともに劣化し、価値が下がっていきます。この価値の減少分を「減価償却費」として経費に計上することで、税金の対象となる所得を減らすことができます。

建物の種類によって償却期間が変わります

  • 建物の構造によって、法定耐用年数が異なります。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、それぞれに定められた年数で償却していく必要があります。
    • 例えば、木造アパートの法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造のマンションなら47年です。 これは、建物の構造や材質によって耐久性が異なるためです。 木造建築は、鉄筋コンクリート造に比べて耐用年数が短く設定されています。
    • また、同じ構造の建物でも、築年数やメンテナンス状況によって耐用年数が異なる場合があります。 そのため、建物の減価償却費を計算する際は、建物の構造だけでなく、築年数やメンテナンス状況なども考慮する必要があります。

償却方法には「定額法」と「定率法」があります

  • 減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があります。
    • 定額法: 毎年一定の金額を償却していく方法です。
    • 定率法: 初期に多くの金額を償却していく方法です。
    • 一般的に、建物の償却には定額法が、設備の償却には定率法が用いられます。 これは、建物は長期にわたって使用されるため、定額法で償却することで、毎年安定した金額を経費に計上できるからです。 一方、設備は建物に比べて耐用年数が短く、初期に故障や修理が発生する可能性が高いため、定率法で償却することで、初期費用を多く計上することができます。

修繕費・維持管理費を経費に計上しよう

建物の修繕費や共用部分の維持管理費、清掃費なども経費として計上できます。 これらの費用を経費に計上することで、所得を減らし、税金を抑えることができます。

  • 修繕費とは?
    • 建物の原状回復を目的とした費用が修繕費に該当します。 例えば、壁紙の張替えや水回りの修理などが挙げられます。 これらの修繕は、建物の価値を維持するために必要なものであり、経費として計上することができます。
  • 資本的支出とは?
    • 建物の価値を高めたり、耐用年数を延ばしたりする費用が資本的支出に該当します。 例えば、増築や大規模なリフォームなどが挙げられます。 資本的支出は、減価償却の対象となります。 つまり、資本的支出を行った場合は、その費用を一度に経費に計上するのではなく、減価償却費として、数年間にわたって経費に計上していくことになります。
  • 修繕費と資本的支出の区分
    • 修繕費と資本的支出の区分は、時に難しい場合があります。 例えば、老朽化した屋根の修理を行う場合、単に既存の屋根材を交換するだけであれば修繕費となりますが、より耐久性の高い素材に交換したり、屋根の形状を変更したりする場合は、資本的支出とみなされる可能性があります。この微妙な判定を個人が下すのはとても難しいと思いますので、必ず税理士に相談することをお勧めします。

固定資産税・都市計画税の軽減措置を受けよう

賃貸住宅用地であれば、固定資産税と都市計画税が一定の条件下で軽減されます。 これは、賃貸住宅の供給を促進するための措置です。

  • 軽減措置の対象となる土地
    • 住宅用地として利用されている土地が対象となります。 ただし、賃貸住宅の戸数や敷地面積など、一定の要件を満たす必要があります。 例えば、賃貸住宅の戸数が3戸以上であること、敷地面積が200平方メートル以上であることなどが要件として挙げられます。
  • 軽減措置を受けるための手続き
    • 軽減措置を受けるためには、市区町村に申請する必要があります。 必要な書類や申請期限などは、お住まいの地域によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

ローン金利を経費計上して節税効果を高めよう

アパートローンなどの借入金利息は、経費として計上できます。 これは、賃貸経営を行う上で必要な費用であると認められているためです。

  • 経費計上できる借入金利息
    • 賃貸経営に直接関係する借入金利息のみが経費計上の対象となります。 例えば、アパートの購入資金やリフォーム費用に充てた借入金利息は経費計上できますが、個人的な用途に充てた借入金利息は経費計上できません。
  • 金利の種類と経費計上
    • 借入金利息には、固定金利と変動金利があります。 固定金利は、借入期間中、金利が一定であるため、返済計画が立てやすいというメリットがあります。 一方、変動金利は、市場金利の変動に合わせて金利が変わるため、金利上昇のリスクがあります。 どちらの金利を選択するかは、それぞれのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身の状況に合わせて判断する必要があります。

青色申告で税金をお得に!

複式簿記で記帳し、確定申告を行う「青色申告」を選択すると、最大65万円の特別控除が受けられます。 これは、青色申告を行うことで、帳簿の信頼性が高まり、税務調査が簡素化されるためです。

  • 青色申告のメリット
    • 青色申告は、節税効果だけでなく、経営状況を正確に把握できるというメリットもあります。 また、青色申告者は、家族に給与を支払うことができます。 これは、家族に賃貸経営の業務を手伝ってもらう場合に、給与を支払うことで、その分の給与を経費として計上できるため、節税効果が期待できます。
  • 白色申告との違い
    • 白色申告は、簡易な方法で記帳できますが、青色申告のような特別控除は受けられません。 また、白色申告者は、家族に給与を支払うことができません。
  • 青色申告を行うための準備
    • 青色申告を行うためには、税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 この申請書は、税務署の窓口でもらうことができます。

最新の節税情報と注意点

令和6年度税制改正

  • 住宅ローン減税制度の拡充やグリーン住宅への投資促進など、賃貸経営に影響する可能性のある改正点も含まれています。 最新情報に常に注意を払いましょう。
  • 住宅ローン減税制度の変更点
    • 控除期間や控除率など、制度の内容が変更される可能性があります。 住宅ローン減税制度は、住宅ローンを借りて住宅を取得した場合に、所得税や住民税が控除される制度です。
  • グリーン住宅投資促進税制
    • 省エネルギー性能の高い住宅の新築やリフォームに対する税制優遇措置が拡充される可能性があります。 グリーン住宅投資促進税制は、省エネルギー性能の高い住宅の普及を促進するための制度です。

インボイス制度への対応

  • 2023年10月1日からインボイス制度が開始されました。適格請求書発行事業者の登録や仕入税額控除の要件など、制度への適切な対応が必要です。
  • インボイス制度の概要
    • インボイス制度は、消費税の仕入税額控除の方式を変更する制度です。 従来の制度では、請求書に記載されている消費税額を仕入税額控除として控除することができましたが、インボイス制度では、適格請求書発行事業者(登録番号を持つ事業者)が発行する適格請求書に記載されている消費税額のみを仕入税額控除として控除することができます。
  • 賃貸経営への影響
    • 家賃収入が課税対象となる場合(主に、駐車場経営や事業用ビル経営をしている方)、インボイス制度への対応が必要となります。 具体的には、家賃収入から必要経費を差し引いた金額が1,000万円を超える場合は、消費税の納税義務が生じます。 また、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者として登録し、取引先から適格請求書を受け取る必要があります。
  • 適格請求書発行事業者の登録
    • 仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。 登録は、税務署に申請することで行うことができます。

デジタル化の推進

  • 国税庁は、e-Taxによる申告や電子帳簿保存を推進しています。 デジタルツールを活用することで、業務効率化と節税効果の向上が期待できます。
  • 電子帳簿保存のメリット
    • 電子帳簿保存により、紙の帳簿を保管するスペースが不要になります。 また、電子データは検索が容易であるため、必要な情報をすぐに探し出すことができます。
  • 会計ソフトの活用
    • 会計ソフトを利用することで、効率的に記帳や申告を行うことができます。 会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込む機能や、仕訳を自動で作成する機能など、便利な機能が多数搭載されています。

3. 専門家によるサポート

節税対策は、法律や税制の知識、そして個々の状況に合わせた適切な判断が求められます。税理士などの専門家に相談することで、より効果的な節税対策を検討することができます。

  • 専門家活用のメリット
    • 専門家は、最新の税制改正情報や個々の状況に合わせた最適な節税方法をアドバイスしてくれます。
  • 税務調査への対応
    • 税務調査が入った場合でも、専門家が対応してくれるので安心です。

4. まとめ

賃貸経営を成功させるためには、税制を知り、賢く節税することがとても重要です。 減価償却費の活用、修繕費や維持管理費の計上、固定資産税・都市計画税の軽減措置、ローン金利の経費計上、青色申告、e-Taxの利用など、様々な節税対策があります。 これらの節税対策を組み合わせることで、税負担を軽減し、収益を最大化することができます。

また、最新の税制改正やインボイス制度など、常に最新の情報に注意を払い、適切な対応を行う必要があります。 デジタル化の推進により、e-Taxや電子帳簿保存など、デジタルツールを活用することで、業務効率化と節税効果の向上を図ることもできます。

賃貸経営は、長期的な視点で取り組むことが重要です。 節税対策をしっかりと行い、安定した収益を確保することで、将来にわたって安心して賃貸経営を続けることができます。

当社で調べたところ、税理士に依頼していないオーナー様が意外と多いことに驚きました。確実にメリットがあると言えますので、税理士に依頼することを強くオススメします。

この記事を書いた人

酒井毅のアバター 酒井毅 代表取締役、不動産セラピスト

1984年生まれ。生まれも育ちも熊谷市。
県立熊谷高校(ラグビー部)を経て、早稲田大学商学部を卒業。

2008年、サカイ・エージェンシー 入社。
2013年、代表取締役 就任。

2024年からは【不動産セラピスト】として活動を展開中。
様々なお客様の想いや悩みに寄り添いながら、苦しい時期を乗り越えて、喜びに変わる姿をご提案いたします。

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