賃貸アパート・マンションをお持ちで、その物件に「受水槽」が設置されているオーナー様へ。
ここで紹介する内容はとても重要です。改めてご自身の物件を見つめ直す機会にしてください。
受水槽とは?
受水槽は、水道水の供給設備で、主に3階建て以上の集合住宅の場合に設置されています。
受水槽とは、ビル・マンション・学校・病院など多量の水を使用する建物などで、水道局から供給された水をいったんためておく容器のこと。
SUUMO(スーモ)住宅用語大辞典 https://suumo.jp/yougo/s/jusuisou/
受水槽の仕組み
モーターポンプを動かして、タンク内に貯めてある水道水を各戸に供給する仕組みになっています。
水を使っているときにタンク内からモーターの稼働音がするので、イメージしやすいかと思います。
高層建築物で屋上等に高架水槽がある場合、地階もしくは1階に設けられている受水槽に水をため、高架水槽にポンプで水をくみ上げる。これにより、配水管の水圧が変動しても給水圧・給水量を一定に保持できること、一時に多量の水使用が可能であること、断水時や災害時にも給水が確保できること等の効果がある。
SUUMO(スーモ)住宅用語大辞典 https://suumo.jp/yougo/s/jusuisou/
とてもコワイ、受水槽トラブル
この受水槽に関して、注意が必要なトラブルがあります。
「ポンプの故障」です。
ポンプの故障は、次のような危機を引き起こしかねません。
前述の通り、ポンプで汲み上げる仕組みですから、肝心のポンプが故障すれば「断水」となります。
断水により、水が止まります。
居住者の方は当然「あれ?」と思いますから、オーナー様または管理会社に問い合わせます。
建物全体のことなので、全ての居住者から電話がひっきりなしにかかってくることが容易に想像できます。
生活する上で水が使えないというのは、不自由極まりないことです。
手洗い・料理・洗濯・入浴、全て出来なくなってしまいます。
トイレも、トイレタンク内の水が無くなってしまえば、流すことができなくなります。
「一体これはどういうことだ」「今夜、どうすればいいんだ」「いつ復旧するのか」、というクレームが次々と発生します。
「やむを得ずホテルに泊まったから、ホテル代金を補償してほしい」というクレームにまで膨れ上がる可能性もあります。1人で1泊だったらなんとか補償できるかもしれませんが、複数組で何泊になるか分からない状況です。
本件は、専門性の高い機械のトラブルです。素人がすぐに復旧させられるレベルのものではありません。
ポンプメーカーを呼べばいい、と思うかもしれませんが、そんなに早くは現場に来てくれません。
それどころか「営業時間外なので、現場に行けるのは明日以降です」と言われることもあります。
顔面蒼白なオーナー様と管理会社、という光景が容易に想像できます。
やっと復旧しても、すぐに元通りにはなりません。
意図していない断水の場合、断水している間に受水槽の中に「サビ」「砂利」「泥」などの異物が入ってしまうことがあります。上水道の本管に付着していたものが流入してくることがあるためです。
そうすると、復旧後に居住者の方が水を出したときに、この異物も水と一緒に出てきてしまいます。
早ければ10分ほど水を出し続ければ正常に戻るらしいですが、1時間以上かかるケースもあるようです。
この状況では、居住者の方からのクレームはまだ鳴り止まないでしょう。
ポンプの故障には、経年劣化等による機能不全というケースと、センサーが働いて(モーターが過負荷な状態にならないように)意図的に水の供給を止めてしまうケースがあります。
前者の場合、ポンプ交換が必須となります。
後者の場合、もし空室が1つでもあれば、その部屋で1箇所だけ水を流しっ放しにしておくことで、応急対応が可能な場合があります。
いずれにしても、早急にポンプ交換をしなければ、再発リスクは残ります。
トラブル発生の兆候を知りましょう
なぜ、どのようにしてポンプの故障が発生するのでしょうか。
ポンプの故障を予見させる兆候も知っておくことで、上記のような危機を回避できる可能性があります。
- 直近2回くらい、共用部の水道料金が異常に高い
- 居住者から「受水槽の音が一晩中うるさくて、よく眠れなかった」というクレームがあった
- 居住者から「お湯を使っていないのに、蛇口から熱湯が出てきた」というクレームがあった
受水槽には管理義務がある
トラブル防止のためには、維持・管理をしっかり行うことも大切です。
そもそも、有効容量が10㎥を超えるものには、点検や管理を行う義務があります。
意外とその事実を知らないオーナー様は多いです。
- 受水槽タンクの清掃
- 水質の検査
- 受水槽の点検
主に上記のような維持・管理を、年に1回以上、行うこととされています。
水道法施行規則第55条を根拠にしていますので、これは義務です。
ご自身の物件は大丈夫でしょうか?
適切な維持・管理を行わないと、ある日突然水が止まってしまうという事件が起きてしまうかもしれません。
あってはならない類のトラブルなので、ぜひ今一度チェックしてみてください。
詳細は、埼玉県のホームページにも公開されています。
点検・清掃料金の目安
年1回の点検・清掃費用の目安は、だいたい50,000円前後です。
規模などによって異なると思いますが、弊社でお願いしている業者さんですと、そのくらいです。
作業は半日で終わります。作業後、写真付きの報告書も届きます。
繰り返し申し上げますが、これは法律で定められている義務です。
Before
After
ポンプ交換費用の目安
適切に維持・管理を行っていたとしても、ポンプなどの機械には寿命があります。
短くて5年、長くて10年のサイクルで機械を交換することになります。
ポンプ交換費用の目安は、だいたい50万円~100万円です。
規模などによって異なりますので、必ず見積もりを確認しましょう。
発注から納品まで1~2週間かかる場合もありますので、早めの準備を推奨します。
作業は半日程度で終わります。
適切な管理で、トラブルを防ぎましょう
ここまでお読みいただけた方は、もう十分にお分かりだと思いますが、水のトラブルは本当にコワイです。
人々の生活にダイレクトに影響するからこそ、コワイ。
トラブルが二次的、三次的にと肥大化していくから、コワイ。
改めて、ご自身の物件の管理状況を見直し、適切な維持・管理を行う体制を日頃から整えておきましょう。