賃貸管理に強い不動産会社 サカイ・エージェンシー 埼玉県北部(埼北エリア:熊谷、深谷、本庄、寄居)・群馬県南部(東毛エリア:太田、伊勢崎、高崎)

相続した不動産、どうする?不動産相続の基礎知識と活用方法

相続した不動産、どうする?不動産相続の基礎知識と活用方法

目次

はじめに:相続不動産は「負」の遺産にもなりうる

ご家族やご親族が亡くなり、遺産を相続する際に、現金や預貯金だけでなく不動産が含まれているケースは少なくありません。しかし、相続した不動産は、単なる資産としてだけではなく、場合によっては「負」の遺産となり、相続人にとって大きな負担となることがあります。

例えば、

  • 活用されていない空き家: 地方にある実家など、誰も住む予定のない空き家は、固定資産税や維持管理費用がかかり続ける上に、倒壊や不法投棄のリスクも伴います。
  • 共有名義の不動産: 複数人で共有名義になっている不動産は、売却や活用に際して全員の合意が必要となるため、意見が対立すると身動きが取れなくなることがあります。
  • 立地や状態が悪い不動産: 交通の便が悪く、老朽化が進んでいるなど、市場価値の低い不動産は、売却しようにも買い手が見つからず、処分に困るケースもあります。

このように、相続不動産は、その後の対応を誤ると、相続税の負担や維持管理の手間、さらには相続人同士の争いの火種になる可能性も秘めているのです。

このブログでは、相続不動産にまつわる基礎知識から、具体的な活用方法、そして「どうにもならない」と感じた際の対処法まで、不動産事業者の視点から分かりやすく解説します。相続不動産でお悩みの方、これから相続する可能性がある方にとって、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

不動産相続の基礎知識:まずはここを押さえる

相続した不動産を適切に処理するためには、まずその基本的な知識を理解しておくことが重要です。

不動産相続の全体像:相続発生から名義変更まで

不動産相続は、被相続人の死亡(相続発生)から始まり、いくつかのステップを経て、最終的に不動産の名義が相続人に変更されることで完了します。主な流れは以下の通りです。

  1. 相続の開始(被相続人の死亡): 相続は、被相続人が亡くなった時点から開始されます。
  2. 遺言書の有無の確認: 遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って遺産が分割されます。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要です。
  3. 相続人の確定: 誰が相続人になるかは、民法で定められています。
    • 常に相続人となるのは配偶者です。
    • 次に、血族相続人が優先順位に従って相続します。
      • 第一順位:子(直系卑属)
      • 第二順位:直系尊属(父母、祖父母など)
      • 第三順位:兄弟姉妹
    • 相続放棄をした人や、欠格事由・廃除に該当する人は相続人にはなれません。
  4. 相続財産の調査と評価: 不動産を含む全ての相続財産(プラスの財産とマイナスの財産)を調査し、その価値を評価します。不動産の評価には、固定資産税評価額、路線価、実勢価格など様々な基準があり、相続税評価額は路線価や固定資産税評価額を基に算出されます。
  5. 遺産分割協議: 遺言書がない場合や、遺言書の内容と異なる分割を希望する場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。不動産を誰が相続するか、どのように分割するかなどを話し合い、全員の合意が必要です。協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成します。
  6. 相続税の申告と納税: 相続税がかかる場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署に申告・納税する必要があります。不動産の評価額によっては、多額の相続税が発生することもあります。
  7. 相続登記(不動産の名義変更): 不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。これは法務局で行います。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、期限内に登記しないと過料の対象となる可能性があります。

これらの手続きは複雑であり、期限が定められているものも多いため、専門家(司法書士、税理士、弁護士など)に相談することをおすすめします。

相続税と不動産の評価

相続において不動産は高額な財産となることが多く、相続税に与える影響は非常に大きいと言えます。

相続税の基礎控除

相続税には基礎控除額があり、相続財産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。基礎控除額は以下の計算式で求められます。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円となります。相続財産の総額がこの金額を超えると、超えた部分に対して相続税が課税されます。

不動産の相続税評価額

不動産の相続税評価額は、公示価格や実勢価格とは異なり、一定のルールに基づいて評価されます。

  • 土地:
    • 路線価方式: 路線価が定められている地域では、路線価を基に評価します。路線価は毎年国税庁が公表しており、土地の形状や利用状況に応じて補正されます。
    • 倍率方式: 路線価が定められていない地域(主に郊外や農村部)では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。
  • 建物: 固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

相続税評価額は、実際に売却できる価格(実勢価格)よりも低くなる傾向にあります。そのため、不動産を相続することによって、基礎控除額を超えて相続税が発生する可能性も十分にあります。

小規模宅地等の特例

特定の要件を満たす土地については、「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税評価額を最大80%減額することができます。この特例は、居住用や事業用の宅地が対象となり、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があるため、必ず確認すべき重要な制度です。

  • 特定居住用宅地: 被相続人等が居住していた宅地で、一定の要件を満たす場合、330㎡まで80%減額。
  • 特定事業用宅地: 被相続人等が事業を営んでいた宅地で、一定の要件を満たす場合、400㎡まで80%減額。
  • 貸付事業用宅地: 被相続人等が不動産貸付事業を営んでいた宅地で、一定の要件を満たす場合、200㎡まで50%減額。

この特例の適用には厳格な要件があるため、専門家(税理士)への相談が不可欠です。2.3 共有名義の落とし穴

相続した不動産が複数の相続人の共有名義となるケースはよくあります。しかし、共有名義の不動産には様々な落とし穴が潜んでいます。

  • 処分時の合意形成の困難さ: 不動産を売却したり、大規模な修繕をしたりする際には、共有者全員の同意が必要です。共有者の人数が多い場合や、連絡が取りにくい共有者がいる場合、意見がまとまらず、不動産が「塩漬け」になってしまうことがあります。
  • 維持管理費用の負担: 固定資産税や修繕費用は、共有者全員で分担して支払う義務があります。もし共有者の一人が支払いを拒否した場合、他の共有者が代わりに支払うことになり、トラブルに発展する可能性があります。
  • 相続時の再度の問題: 共有名義の不動産を保有したまま共有者が亡くなると、その持ち分はさらに次の相続人に引き継がれ、共有者が増えて「数珠つなぎ」状態になることがあります。こうなると、ますます売却や活用が困難になります。

共有名義を解消する方法としては、

  • 共有物分割請求: 他の共有者に対して、共有関係の解消を求めることができます。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に共有物分割請求訴訟を提起し、裁判所の判断を仰ぐことになります。
  • 持ち分の売却: 自身の持ち分を他の共有者に売却したり、第三者に売却したりすることも可能です。ただし、第三者への売却は買い手を見つけるのが難しい場合があります。

共有名義の問題は、早期に解決策を検討することが重要です。

相続不動産の活用方法:選択肢を広げる

相続した不動産は、ただ所有しているだけでは維持費がかさむばかりです。税金対策や将来的な資産形成相続した不動産は、ただ所有しているだけでは維持費がかさむばかりです。税金対策や将来的な資産形成を見据え、多角的な視点から活用方法を検討することが重要です。

売却:最もシンプルな選択肢

不動産を売却することは、最もシンプルかつ手軽な選択肢であり、現金化して相続人全員で公平に分割したい場合や、維持管理の手間から解放されたい場合に有効です。しかし、売却にはいくつかの注意点があります。

不動産売却のメリット・デメリット

メリット:

  • 現金化による資産の公平な分割: 売却によって得た現金を相続人で公平に分配することで、相続人間のトラブルを回避できます。
  • 維持費・管理の手間からの解放: 固定資産税や都市計画税、修繕費、管理の手間など、不動産を所有することによる負担から解放されます。
  • 空き家問題の解消: 活用されない空き家を売却することで、地域社会の課題解決にも貢献できます。

デメリット:

  • 売却益に対する税金: 売却によって利益が出た場合、譲渡所得税(所得税+住民税)が課税されます。所有期間によって税率が異なり、長期譲渡所得(所有期間5年超)の方が税率が低くなります。
  • 希望価格での売却が難しい場合: 不動産の立地、築年数、状態、市場動向によっては、希望通りの価格で売却できない場合があります。
  • 不動産仲介手数料などの費用: 不動産会社に仲介を依頼する場合、仲介手数料が発生します(売却価格の3%+6万円+消費税が上限)。
  • 売却活動の手間: 買主探しや内覧対応、契約交渉など、売却活動にはある程度の時間と手間がかかります。

スムーズな売却のためのポイント

スムーズかつ有利に売却を進めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 複数の不動産会社に査定を依頼: 複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討することで、適正な価格を知り、信頼できるパートナーを見つけることができます。一括査定サイトの活用も有効です。
  • 物件の魅力を最大限に引き出す: 清掃や片付け、軽微なリフォームなどを行うことで、物件の印象を良くし、売却価格アップにつなげることができます。
  • 「空き家特例」の活用検討: 相続した空き家を売却する場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合の3,000万円特別控除」の特例が適用できる場合があります。この特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却し、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるというものです。適用には厳格な要件があるため、税理士に相談することをおすすめします。
  • 築年数や状態が悪い場合の対処法:
    • 買取保証付き売却: 一定期間売却できなかった場合に不動産会社が買い取ることを保証するサービスです。確実に現金化したい場合に有効ですが、通常の売却よりも価格が低くなる傾向があります。
    • 不動産買取: 不動産会社が直接買い取る方法です。仲介手数料は不要で、スピーディーに現金化できますが、市場価格よりも安価になることが多いです。
    • 古家付き土地として売却: 建物に価値がない場合でも、土地としての需要があれば売却可能です。買主が解体費用を負担するケースもあります。

賃貸経営:安定した収益源とする

相続した不動産が良好な立地にある場合や、賃貸物件として活用しやすい構造であれば、賃貸経営を検討する価値があります。安定した家賃収入を得ることで、相続税の支払いや今後の生活費に充てることも可能です。

賃貸経営のメリット・デメリット

メリット:

  • 安定した家賃収入: 定期的な家賃収入により、安定した不労所得を得ることができます。
  • 相続税対策: 不動産は現金に比べて相続税評価額が低くなる傾向があり、また貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例が適用できる場合があります。
  • 不動産の維持・保全: 入居者がいることで、空き家になることによる劣化や不法投棄のリスクを軽減できます。
  • 売却時期を自由に選択できる: 賃貸経営をしながら、市場が上昇するタイミングを待って売却することも可能です。

デメリット:

  • 空室リスク: 入居者が見つからない場合や、退去が続くと家賃収入が途絶え、収益が悪化します。
  • 維持管理の手間と費用: 修繕費、リフォーム費用、固定資産税、管理委託費用など、定期的な出費が発生します。
  • 入居者トラブル: 家賃滞納や騒音問題、近隣住民とのトラブルなど、入居者に関する問題に対応する必要があります。
  • 金利変動リスク: ローンを利用して購入・リフォームする場合、金利が上昇すると返済負担が増加します。
  • 災害リスク: 地震や台風などの自然災害による被害のリスクがあります。

賃貸経営の種類と選び方

賃貸経営には、アパート・マンション経営、戸建て賃貸、駐車場経営など、様々な種類があります。

  • アパート・マンション経営: 複数の住戸から安定した家賃収入を得られます。規模が大きいほどリスク分散効果も期待できますが、初期投資や管理の手間も大きくなります。
  • 戸建て賃貸: ファミリー層に人気があり、長期的な入居が見込める場合があります。リフォーム費用が高くなる傾向がありますが、一棟まるごとのため入居者トラブルが少ない傾向にあります。
  • 駐車場経営: 比較的初期投資が少なく、管理の手間も小さいですが、収益性は低い傾向があります。土地の形状や立地によって適性が大きく異なります。
  • トランクルーム経営: 都市部や住宅密集地で需要があります。初期投資は比較的抑えられますが、収益性は立地に左右されます。

どの種類の賃貸経営を選ぶかは、相続した不動産の立地、広さ、築年数、状態、そして相続人のライフプランやリスク許容度によって異なります。不動産会社やコンサルタントに相談し、適切な事業計画を立てることが重要です。

成功するためのポイント

賃貸経営を成功させるためには、以下のポイントが重要です。

  • 入念な市場調査とターゲティング: 周辺の賃貸需要、競合物件の状況、ターゲット層(単身者、ファミリー、学生など)を徹底的に調査し、適切な家賃設定と物件コンセプトを確立します。
  • 信頼できる管理会社の選定: 入居者募集、賃貸借契約、家賃回収、クレーム対応、退去時の立ち会いなど、賃貸管理業務は多岐にわたります。信頼できる管理会社に委託することで、手間を省き、安定した経営を目指せます。
  • 定期的なメンテナンスとリフォーム: 物件の価値を維持し、入居者の満足度を高めるためには、定期的なメンテナンスや、必要に応じたリフォームが不可欠です。
  • 適切な資金計画: 空室期間や突発的な修繕費用に備え、余裕を持った資金計画を立てておくことが重要です。

自己居住:住まいとして活用する

相続した不動産が、ご自身の居住地として適している場合、そのまま住まいとして活用することも有効な選択肢です。特に、被相続人が住んでいた家を相続する場合、思い入れがある方も多いでしょう。

3.3.1 自己居住のメリット・デメリット

メリット:

  • 住居費の節約: 家賃や住宅ローン返済が不要になるため、大きな経済的メリットがあります。
  • 税制優遇: 居住用財産として、「住宅ローン控除」や「居住用財産の買換え特例」など、様々な税制優遇を受けられる可能性があります。
  • 愛着のある場所での生活: 思い出の詰まった家で生活することで、精神的な安定や満足感を得られます。

デメリット:

  • 維持管理費用: 固定資産税や修繕費用、光熱費などの維持管理費用は自己負担となります。
  • リフォーム費用の負担: 築年数が経っている場合や、好みに合わない場合、大規模なリフォームが必要になることがあります。その費用は自己負担です。
  • 通勤・通学の利便性: 勤務先や学校へのアクセスが悪い場合もあります。ライフスタイルの変化に対応できない可能性も考慮する必要があります。

3.3.2 自己居住を選択する際の注意点

自己居住を選択する際には、以下の点に注意しましょう。

  • ライフプランとの整合性: 将来的な転勤や家族構成の変化など、ライフプランと不動産の立地や広さが合致しているか検討が必要です。
  • リフォーム費用の見積もり: 築年数が古い物件や、内装・設備が好みに合わない場合は、リフォーム費用がかさむ可能性があります。事前に専門業者に見積もりを依頼し、資金計画に含めることが重要です。
  • 固定資産税・都市計画税の負担: 自己居住の場合でも、毎年固定資産税と都市計画税が発生します。これらの税金は、不動産の評価額に基づいて算出されるため、事前に確認しておく必要があります。
  • 維持管理: 庭の手入れや外壁の修繕など、住まいを維持するための手間と費用がかかります。

その他の活用方法:多様なニーズに応える

売却、賃貸、自己居住の他にも、相続不動産には様々な活用方法があります。不動産の特性や地域のニーズに合わせて、柔軟な発想で検討してみましょう。

貸地・事業用賃貸

土地の形状や立地によっては、建物を建てずに土地を貸し出す「貸地」として活用する方法があります。

  • 月極駐車場: 需要のある地域であれば、安定した収益が見込めます。初期投資も比較的抑えられます。
  • 資材置き場、建設現場ヤード: 建設現場や企業の資材置き場として一時的に貸し出すケースもあります。
  • 太陽光発電用地: 広大な土地であれば、太陽光発電設備を設置し、売電収入を得ることも可能です。ただし、初期投資が大きく、国の政策や買取価格に左右されるリスクがあります。
  • 事業用賃貸: 店舗やオフィス、倉庫などとして貸し出す方法です。周辺に商業施設やオフィス街がある場合、需要が見込めます。賃料は住居用よりも高くなる傾向がありますが、契約期間が長く、安定した収益が期待できる一方で、業種や入居テナントの信用力に左右されるリスクもあります。

駐車場付き賃貸

戸建てやアパートの敷地内に空きスペースがある場合、駐車場として貸し出すことで、付加価値を高め、空室対策にもつながります。

  • 入居者専用駐車場: 居住者向けの駐車場を設けることで、入居率の向上や家賃アップにつながります。
  • 外部貸し駐車場: 周辺に駐車場が少ない地域であれば、居住者以外にも駐車場として貸し出すことで、追加収入を得られます。

空き家活用:地域貢献と収益化の両立

増加する空き家問題は社会課題となっていますが、空き家をリノベーションして新たな価値を生み出すことで、地域貢献と収益化を両立させることも可能です。

  • 民泊施設: 観光地やイベント会場が近い場合、民泊として活用することで、高い収益を期待できます。ただし、旅館業法の許可が必要であり、運営には手間がかかります。
  • シェアハウス・ゲストハウス: 若者や外国人旅行者向けのシェアハウスやゲストハウスとして活用することで、安定した入居者を見込める可能性があります。
  • 地域交流スペース・コワーキングスペース: コミュニティスペースやコワーキングスペースとして貸し出すことで、地域の活性化に貢献しつつ、利用料収入を得られます。
  • 店舗・カフェ: リノベーションして魅力的な店舗やカフェにすることで、地域のランドマークとなり、周辺の賑わい創出に貢献できます。

これらの活用方法は、それぞれにメリット・デメリットがあり、適切な選択には専門知識が必要です。不動産事業者に相談し、地域の特性や市場ニーズ、そしてご自身のライフプランを考慮した上で、最適な活用方法を見つけることが重要です。

「どうにもならない」と感じた時の対処法:専門家の力を借りる

相続した不動産が、売却も賃貸も自己居住も難しい「負」の遺産になってしまったと感じるケースも少なくありません。しかし、諦める必要はありません。専門家の力を借りることで、解決の糸口が見つかる可能性があります。

弁護士:共有名義問題や相続トラブルの解決

共有名義の不動産で意見がまとまらない場合や、遺産分割協議でトラブルが発生した場合など、法的な問題が絡む場合は弁護士に相談すべきです。

  • 共有物分割請求訴訟: 共有者間で合意が得られない場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起し、裁判所の判断で共有関係を解消することができます。
  • 遺産分割調停・審判: 相続人同士の話し合いで遺産分割がまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することで、問題解決を図ります。
  • 相続放棄: 相続財産が借金など「負」の財産ばかりで、相続したくない場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをすることで、相続人としての権利義務を一切放棄できます。

弁護士は、法律の専門家として、相続人の方々の権利を守り、最適な解決策を提案してくれます。

税理士:相続税対策と税務申告

相続税の計算や申告は非常に複雑であり、専門知識が必要です。特に不動産が含まれる相続においては、その評価方法や特例の適用可否によって税額が大きく変動するため、税理士のサポートが不可欠です。

  • 相続税の計算と申告: 相続財産の評価、基礎控除額の算出、税額計算、申告書の作成など、相続税に関する全ての業務を代行してくれます。
  • 小規模宅地等の特例の適用支援: 居住用宅地や事業用宅地など、特定の土地に適用される小規模宅地等の特例は、相続税を大幅に軽減できる可能性がありますが、適用要件が複雑です。税理士が適用可否を判断し、必要な手続きをサポートします。
  • 相続税対策のアドバイス: 生前の相続税対策(不動産の有効活用、生前贈与など)についてもアドバイスを受けられます。

税理士に相談することで、適正な相続税額を算出し、節税につながるアドバイスを受けることができます。

不動産会社:売却・活用の専門家

相続不動産の売却や活用において、最も身近な専門家は不動産会社です。特に、相続不動産に特化したサービスを提供している不動産会社に相談することで、より専門的なアドバイスを受けられます。

  • 不動産査定: 精度の高い不動産査定を行い、適正な売却価格を提示してくれます。
  • 売却活動: 買主探し、内覧対応、契約交渉、引き渡しまで、売却に関する全ての業務をサポートします。
  • 買取保証付き売却・不動産買取: スムーズな現金化を希望する場合、買取保証付き売却や不動産買取の提案を受けることができます。
  • 賃貸経営コンサルティング: 賃貸経営を検討している場合、市場調査、事業計画の立案、管理会社の紹介など、賃貸経営に関する総合的なコンサルティングを提供してくれます。
  • 有効活用提案: 売却や賃貸だけでなく、貸地、駐車場経営、空き家リノベーションなど、幅広い視点から有効活用方法を提案してくれます。

不動産会社は、市場の動向や地域の特性に精通しており、相続不動産の価値を最大限に引き出すための戦略を立案してくれます。

司法書士:相続登記と名義変更の専門家

相続した不動産の名義を被相続人から相続人に変更する「相続登記」は、2024年4月1日から義務化されました。 相続登記を怠ると、過料が科される可能性があるため、速やかに手続きを行う必要があります。

  • 相続登記の代行: 不動産の登記事項証明書や戸籍謄本などの必要書類を収集し、法務局への申請手続きを代行してくれます。
  • 遺産分割協議書の作成支援: 遺産分割協議がまとまった際、相続登記に必要な遺産分割協議書の作成をサポートします。
  • 登録免許税の計算: 相続登記にかかる登録免許税の計算を行います。

司法書士は、不動産の権利関係の専門家であり、正確かつスムーズな相続登記を実現してくれます。

事例から学ぶ:相続不動産活用の成功例と失敗例

ここからは、具体的な事例を通じて、相続不動産の活用における成功例と失敗例を見ていきましょう。

成功事例:負動産を収益不動産へ転換

事例1:地方の老朽化した空き家を再生し、地域活性化に貢献

  • 背景: 都心に住むAさんは、地方にある実家(築50年以上の老朽化した戸建て)を相続しました。売却も賃貸も難しいと諦めかけていましたが、地域への貢献と収益化を両立させたいと考えていました。
  • 課題:
    • 都心から離れた地方にあり、一般的な不動産会社では買い手を見つけるのが困難。
    • 建物が老朽化しており、大規模なリフォームが必要。
    • 相続税の支払い期限が迫っていた。
  • 解決策:
    • 地元のNPO法人と連携し、空き家バンクに登録。
    • 地域活性化に熱心な不動産事業者と提携し、古民家再生プロジェクトを企画。
    • 地方移住を検討している若者やクリエイター向けに、シェアオフィス併設の住居としてリノベーションすることを提案。
    • 改修費用の一部は、国の空き家再生補助金やクラウドファンディングを活用。
  • 結果:
    • 築年数の古い物件でしたが、趣のある古民家として再生され、新たな価値が創出されました。
    • 移住者にとって魅力的な住まい兼仕事場となり、地域の活性化に貢献。
    • Aさんは、家賃収入を得るとともに、相続税の支払いに充てることができ、負動産が収益不動産へと転換しました。

事例2:複数相続人の共有名義不動産を売却で解決

  • 背景: Bさんは、兄弟3人と共同で実家(一戸建て)を相続しました。兄弟それぞれに生活があり、実家をどうするかで意見が分かれ、長年放置されていました。
  • 課題:
    • 共有名義のため、売却や活用に際して兄弟全員の合意形成が困難。
    • 維持管理費用は発生するものの、誰も住んでいないため、無駄な出費が続いていた。
    • 将来的にもめるのが嫌で、早めに解決したいと考えていた。
  • 解決策:
    • 相続に強い弁護士に相談し、遺産分割協議の調整を依頼。
    • 弁護士を介して、不動産の売却を提案し、売却代金を公平に分割することで合意形成を試みた。
    • 不動産会社に相談し、相続不動産の売却実績が豊富な会社を選定。
    • 売却後の手続き(譲渡所得税の計算など)についても税理士のサポートを受けることを提案。
  • 結果:
    • 弁護士の調整により、兄弟全員が売却に同意。
    • 不動産会社が迅速に買い手を見つけ、比較的短期間で売却が完了。
    • 売却代金を公平に分割したことで、相続人間のトラブルを回避し、それぞれが自身の資産として活用できるようになった。
    • 空き家が解消され、維持管理の負担からも解放された。

失敗事例:適切な対応を怠った結果

事例1:放置された空き家が負の遺産となる

  • 背景: Cさんは、都心から電車で1時間ほどの場所に位置する、両親が住んでいた戸建てを相続しました。自身は持ち家があり、今後も住む予定がなかったため、特に何もせず放置していました。
  • 問題点:
    • 空き家を放置した結果、老朽化が進行し、屋根の破損や雨漏りが発生。
    • 庭の手入れもされず、雑草が生い茂り、近隣住民から苦情が寄せられるようになった。
    • 不法侵入や不法投棄の被害に遭い、物件の価値が大幅に下落。
    • 特定空き家に指定され、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が増加。
    • 結局、売却しようにも買い手が見つからず、やむなく二束三文で不動産買取業者に売却することになった。
  • 教訓:
    • 空き家は放置すると、費用と手間がかかるだけでなく、物件の価値も下落する「負」の遺産となりかねません。
    • 早めに専門家に相談し、売却、賃貸、活用などの対策を検討することが重要です。

事例2:共有名義問題が長期化し、身動きが取れなくなる

  • 背景: Dさんは、叔父・叔母との共同名義で、祖父母が住んでいた古いアパートを相続しました。当初は賃貸経営を続けることを検討しましたが、大規模修繕が必要となり、費用負担で意見が対立しました。
  • 問題点:
    • 大規模修繕費用について、共有者間で意見がまとまらず、修繕が進まない。
    • 老朽化が進むにつれて空室が増え、家賃収入が減少。
    • 各共有者の連絡先が不明になったり、相続が繰り返され、共有者が増えすぎて、売却や活用に向けた話し合い自体が困難になった。
    • 結果として、アパートは廃墟同然となり、収益化どころか、固定資産税の負担だけが残った。
  • 教訓:
    • 共有名義の不動産は、早期に共有関係の解消や、活用方法について話し合いを進めるべきです。
    • 意見がまとまらない場合は、弁護士などの専門家を交えて、共有物分割請求なども視野に入れる必要があります。
    • 問題を放置すると、時間とともに事態は悪化し、解決がさらに困難になります。

まとめ:相続不動産は早期の検討と専門家との連携が鍵

相続した不動産は、適切に活用すれば大きな資産となりますが、その対応を誤ると「負」の遺産と化し、相続人に多大な負担を強いることになります。本記事を通じて、相続不動産に関する基礎知識、多様な活用方法、そして「どうにもならない」と感じた際の対処法についてご理解いただけたことと思います。

相続不動産における最も重要なポイントは、以下の2点に集約されます。

  1. 早期の検討と意思決定: 相続発生後、できるだけ早い段階で相続不動産の評価を行い、相続人全員で今後の方針について話し合うことが重要です。相続登記の義務化も踏まえ、期限内に必要な手続きを進める必要があります。
  2. 専門家との連携: 相続は、税金、法律、不動産の専門知識が複雑に絡み合うため、一人で全てを解決しようとすると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。弁護士、税理士、不動産会社、司法書士など、それぞれの分野の専門家と連携し、適切なアドバイスを受けることが成功への鍵となります。

私たち不動産事業者は、相続不動産に関するご相談を幅広く承っております。売却、賃貸、有効活用、そして専門家への橋渡しまで、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なプランをご提案させていただきます。相続不動産でお悩みでしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。お客様の「負」の遺産を「正」の資産へと転換させるお手伝いをさせていただきます。

オンラインでのお問い合わせ 季刊誌『イエノワ』